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2026.07.27

COTEN×丸井グループ 両社が描く人文知の社会実装 Partner's Interview♯13 COTEN

丸井グループは、投資先・協業先との取り組みをグループ全体で加速するために、全社横断で「共創チーム」を組成しています。株式会社COTENとの共創チームは、人文知と社会の架け橋になることをめざすCOTENを応援する「COTENカード」の発行など、人文知を社会で活用していくための取り組みを進めています。

今回は、株式会社COTEN取締役の杉山サーシャさんと丸井グループ社員2名が、共創を通じてめざす世界や人文知を活用した新たな構想について対話した様子をお届けします。

〈対話に参加した社内メンバー〉

木内 萌瑞(左)
株式会社エポスカード 「好き」を応援するカード事業部 企画・開発1課

面屋 紘子(右)
株式会社丸井グループ 人事部 ワーキングインクルージョン推進担当

人文知の社会実装に挑む、COTENと丸井グループの共創チーム

― まずは、それぞれの自己紹介からお願いします。

面屋:私は株式会社丸井グループ 人事部 ワーキングインクルージョン推進担当の面屋です。2026年4月に共創チームが発足したタイミングで参加し、おもに人文知を活用した社会の実現に向けた共創企画の設計に携わっています。

木内:株式会社エポスカード 「好き」を応援するカード事業部 企画・開発1課の木内です。私も面屋と同じタイミングで共創チームに参加しました。おもに COTENカードを中心としたCOTENファン拡大の取り組みを推進する担当をしています。本日はよろしくお願いいたします。

杉山:本日はお招きいただきありがとうございます、株式会社COTENの杉山です。簡単にCOTENの紹介をさせていただきますね。株式会社COTENは、「人文知と社会の架け橋になる。」をミッションに掲げる企業です。

人文知と社会の架け橋になるべく、世界史データベース(多様な解釈や視点を、出典や文脈とともに並存させたまま検索・参照できるように構造化したサービス群)の開発や、人文知を社会に届けるポッドキャスト「COTEN RADIO」を主軸とするメディア事業などを行っています。私はその中で、人文知を社会や企業の意思決定に実装するきっかけづくりに携わっています。

ビジネスや人生におけるメタ認知の重要性

― 前提からうかがいたいのですが、そもそも人文知はビジネスや私たちの生活にどのような価値をもたらすのでしょうか。

杉山:私たちは人文知が世の中にもたらす価値を、「物事の前提を見えるようにすること=メタ認知」だと考えています。例えばビジネスの世界には、さまざまな理論やフレームワークがありますよね。それらは非常に有効ですが、「なぜその理論が生まれたのか」「どのような背景に成り立っているのか」といった前提を深く考える機会はそれほど多くありません。

ビジネスにはスピードが求められるため、既存の理論を活用すること自体は合理的ですが、その前提が無意識のうちに固定化されると、本来見えるはずだった選択肢が見えなくなり、手段が目的化してしまうことがあります。人文知は、その無意識の前提を問い直すための視点を与えてくれるものです。

私たちの事業の一つである、「COTEN Co-Lab」では、企業において女性の社会参与を推進していく取り組みを行っています。その中でも、女性管理職の割合をどう増やすかという表面的な話だけでは終わりません。人文知を通じて、背景にある歴史や文化、社会構造まで掘り下げることで、本質的な課題を調査しています。

木内:私は共創チームに入るまでは、人文知という言葉をあまり意識していませんでした。ただ、「COTEN RADIO」を聴いて、杉山さんとも対話を重ねていく中で、「実は自分も人文知的な問いを日常の中で考えていたのかもしれない」と感じるようになりました。

杉山:そうだったんですか?

木内:はい。「なぜ働くのだろう」「どんな人生を送りたいのだろう」といった問いを通して、自分自身の価値観や判断軸を見つめ直してみたのですが、それも人文知の一つの実践なんだ、と気づいたんです。このような問いが個人に閉じるのではなく、周囲との対話につながり、組織や社会へ広がっていく未来には、大きな可能性があると感じています。

面屋:私も人文知の価値は「自分なりの判断軸を持てること」だと思っています。現代はAIの進化によって、さまざまな情報が簡単に手に入る時代になりましたが、最後に判断するのはあくまでも自分自身です。歴史や哲学を通じて人間の営みを学ぶことで、道を大きく踏み外さないための羅針盤を持つことができる。人文知は正解を与えるものではなく、自分自身で問い、判断する力を育てるものだと感じています。

「行動変容」ではなく、「視点変容」を起こしたい

面屋:ビジネスにおける人文知の役割に戻りますが、杉山さんとの対話の中で「行動変容」と「視点変容」という考え方について、よく話題になるかと思います。

企業活動では、どうしても「サービスを利用していただく」「何かを購入していただく」といった、行動の変化に目が向きがちです。ただ、価値を感じていないことに対して行動を促すには、継続的にインセンティブやマーケティングコストをかけ続けなければなりません。一方で、その人自身の見方や価値観が変われば、行動は自然と変わってきます。

杉山:企業のマーケティングも同じです。「自分たちを好きになってください」と語りかけるのではなく、なぜこの時代にこの商材やサービスが必要なのかを、納得できる形で伝え、体験してもらう。その結果として、自ら納得し共感した人々が主体的に行動を起こすようになる。外部からの働きかけに依存して行動を「起こさせる」構造から、内発的な共感が行動を「生み出す」構造への転換——これがマーケティングの効率性を構造的に高めるはずです。

面屋:これは丸井グループが経営ビジョンに掲げる「『好き』が駆動する経済」とも重なります。誰かにやらされるから行動するのではなく、一人ひとりの価値観や感情といった「好き」が原動力になる。その先で、暮らしや仕事にも喜びを見出し、すべての人が希望を持てる社会をめざしていく。このような社会にどう近づくかというテーマは、私たちとCOTENさんに通底することだと感じています。

COTENが迎えている「認知から実装」への転換期

― 現在のCOTENさんは、どのようなフェーズにあるのでしょうか。

杉山:私たちは今、大きな転換期を迎えています。これまでの10年間は、「COTEN RADIO」を中心に、人文知の価値やおもしろさを広く届けることに取り組んできました。ありがたいことに多くの方に聴いていただき、経営者などの意思決定層の方からは「組織運営の参考になった」といったうれしい声もいただいています。

ただ、先ほどのお話にもつながりますが、私たちが最終的にめざすところは、「COTEN RADIO」の視聴者を増やすことではなく、人文知を日常生活や仕事の中で活用している人を増やすことです。そのための挑戦が、次のフェーズです。

とはいえ、人文知の価値は数値で測りづらく、短期的な成果も見えにくいという難しさがあります。「考え方が変わった、判断の仕方が変わった」といった変化は、売上のように明確な指標ではとらえられません。だからこそ、人文知に価値を感じてくださる方々と一緒に、活用方法を検討していきたいと考えています。

面屋:短期的な利益よりも、長期的な価値の最大化をめざす動きは、私たちにも経験があります。丸井グループでは15年ほど前に二度の赤字決算に陥り、経営危機を経験しました。

当時は業績改善が大きなテーマで、「まずは短期的な成果を優先すべきではないか」という意見もありました。そんな中で私たちが実施したのは、「そもそもなぜ働くのか」という問いについて対話を重ねることでした。その結果、「お客さまのお役に立つために進化し続ける」という経営理念に立ち返り、お客さまの声に耳を傾けることを選びました。

こうした取り組みは、すぐに成果として現れるものではありません。しかし、対話を通じて本当に大切にすべきことを見つめ直すことが、長期的な企業価値の向上につながると信じ、社長の青井を中心に取り組みを続けてきました。その経験があるからこそ、人文知のような中長期的に価値を生み出すテーマにも大きな可能性を感じています。

共創の取り組み第一弾としての「COTENカード」

木内:両社の思想が一致し、はじまった共創の取り組みとして最初に生まれたのが「COTENカード」でした。COTENカードは、人文知の可能性に共感する方々が、日常の消費活動を通じてCOTENの活動を応援できる仕組みです。

COTENカードの券面

杉山:印象的だったのは、カードのローンチ後に見えてきた会員の皆さまのインサイトです。アンケートを通じて会員の皆さまの声をうかがったところ、「COTEN好き同士で対話し、自分たちの問いを深めたい」という声が多く寄せられました。

改めて「問いについて考え続けたい」「同じ関心を持つ人と対話したい」というニーズがあるのだと気づかされました。人文知に共感する方々が何を求めているのかを知る機会になりましたし、この気づきが、現在構想している新たな取り組みにもつながっていますよね。

※COTENカードの詳細はCOTEN公式noteをご覧ください。

「COTENカード」、設計から見えてきたCOTENらしさとは。企画の舞台裏に迫る

次なる挑戦は、「問いを日常に実装する場」を増やすこと

― これからのフェーズにおいて大切なことは何でしょうか。

杉山:人文知は教えられて身につくものではなく、自分自身で使うことで初めて意味を持つものだという姿勢だと思います。知識として理解するだけではなく、内省や他者との対話を通じて問い続ける。その実践があって初めて、人文知は「生きた知恵」になります。

だからこそ、必要なのは人文知を実践できる場です。誰かの経験や悩み、あるいは日常で感じた違和感をきっかけに問いが生まれ、その問いについて考えてみる。コミュニティをつくること自体が目的ではなく、問いを中心に据え、一人ひとりがそれを咀嚼しながら対話していく。そうした経験を通じて、日常で人文知を活かしていけるのではないかと思っています。

面屋:私たちも、人文知の入口は必ずしも大きなテーマである必要はないと考えています。仕事や暮らしの中で感じるモヤモヤや違和感も、十分に価値のある問いだと思います。

そうした問いを持ち寄り、さまざまな視点に触れながら自分なりの考えを深めていく。そんな場を一緒につくっていきたいと思っています。

― めざす未来に向けて、両社のどのような強みを活かしていくのでしょうか。

杉山:私たちは問いを生み出すことを得意としています。一方で、その問いを社会の中で実践につなげていくためには、多様な人々との接点が欠かせません。そうした意味で、今回の共創には大きな可能性を感じています。

面屋:店舗やエポスカードといったアセットはもちろん私たちの強みですし、そうした接点を活かした共創はぜひ推進していきたいと考えています。加えて、「対話の文化」のような目に見えないアセットにも活用の可能性があると考えています。

丸井グループでは、企画を考える際にも「本当にお客さまに喜んでいただけるのか」「お客さまは何を求めているのか」といった問いが自然と交わされます。

経営危機の話にも通ずる部分ですが、長年にわたってお客さまと向き合い、対話を重ねてきた中で育まれてきた文化そのものが、価値共創を支える土台になっていると考えています。

木内:幅広いお客さまとの接点を通じて、人文知に興味を持つ方だけでなく、これまで接点のなかった方々にも、新たな出会いを届けられる機会をつくっていきたいですね。

一人ひとりが自分なりの答えを探せる社会へ

― 人文知が広がった先にある社会はどのような姿をしていると思いますか?

杉山:私たちがめざしているのは、一人ひとりが自分自身の判断軸を取り戻せる社会です。社会が求める正解や、誰かが示した答えに従うだけではなく、「自分はどう生きたいのか」「自分は何を大切にしたいのか」を問い続けられる状態です。そして企業もまた、自分たちはどのような未来に貢献したいのか、そのために何を成し遂げるべきなのかを問いながら経営できるようになることが重要だと思っています。

木内:人文知が広がることで、一人ひとりが自分なりのしあわせの軸を持ちやすくなると思っています。私自身、以前は誰かの成功や結果を基準にして物事を考えてしまうこともありましたが、歴史やさまざまな事例に触れる中で、価値の発揮の仕方は一つではないと気づきました。人文知は、自分らしい選択をするための支えになってくれると思います。

面屋:誰かの成長を応援できる社会につながってほしいと思っています。そして、自分や周囲の人が成長していくことそのものが、社会の前進につながっていると実感できる世界をつくりたいです。引き続き人文知が社会に貢献できる形を、両社で模索していきましょう!