代表執行役員 CEO
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「人的資本経営」が、さらに次のステージへ
進もうとする勇気を与えてくれた
2023年は丸井グループが次のステージへと進む節目の年になりそうです。これまで取り組んできたさまざまなこと、その点と点がつながって、線になってきたことでめざす姿がようやく見えてきました。また、私たちが取り組んできたことが時代と同期し、社会と共鳴し始めているようにも感じます。
そう感じるようになったきっかけが、「人的資本経営」をめぐる近年の動向です。「人的資本経営」は人を価値創造の主体ととらえ、人の力を活かし、人に投資することで企業価値を高めよう、という考え方です。従来の人をコストととらえ、管理することを主眼としてきた経営と対比されます。欧米ではかねてから重視されていましたが、日本でも2020年ごろから経済産業省などを中心に議論が進みました。
そして、2023年3月期から有価証券報告書に人的資本に関する情報の開示が義務化されたことで、一気に注目を集めることになり、2022年は「人的資本元年」といわれるまでになりました。こうした動向に応えて、当社は2022年5月の決算説明会で「丸井グループの人的資本経営」について株主・投資家に説明しました(「人的資本経営#1~企業文化の変革~」参照)。また、同6月には有価証券報告書への開示も行いました。
そうした中で気づいたのは、世の中で「人的資本経営」と呼ばれているものが、私たちが2007年以来15年以上にわたって取り組んできたことと驚くほど重なっている、ということでした。
もちろん、15年前には「人的資本経営」という言葉もありませんでしたので、私たちはいわゆる「人的資本経営」を実践してきたわけではありません。経営理念である「人の成長=企業の成長」の実現に向けて、私たちが「こんな会社にしたい」「こんな風に働きたい」と願って取り組んできたさまざまなことが、結果的に人的資本経営とシンクロしていたのです。
この偶然の一致は、私たちにある気づきをもたらしました。私たちが大事だと思って取り組んできたことが、時代の歩みと同期し、社会の価値観と共鳴しているという感覚です。自分たちにとって大事なことが、世の中にとっても大事なことで、時代の求めるものとも一致しているという感覚は、私たちに喜びと、さらに次のステージへ進もうとする勇気を与えてくれました。

めざす姿を揺るぎのないものにするため、
定款に「企業理念の実践」を新設
そこで、「人的資本経営」というテーマに沿いつつ、これまでの経緯と今後のめざすべき姿についてご説明します。
丸井グループは2019年に「VISION 2050」を公表し、その中で「社会課題の解決と利益の二項対立を乗り越える」というビジョンを掲げました。これを受けて、2021年からスタートした中期経営計画では、利益や資本効率などの財務目標に加えて、「インパクト目標」を設けました。
インパクトは、丸井グループが取り組む社会課題のことです。私たちがめざしたのは、単に新たな目標を付け加えることではなく、「インパクト目標を達成することで、その結果として財務目標を達成する」という新しい経営のあり方でした。しかしながら、インパクト目標については、大きなテーマは決まったものの、具体的にどのように事業に落とし込んでいったらいいか試行錯誤が続きました。
そうした中、少しずつですが、インパクトと利益を両立させるイノベーションが生まれてきました。今回の共創経営レポートでもご紹介するサステナブル・シューズの「Kesou」や再生可能エネルギー、応援投資、ヘラルボニーカードなどの取り組みです。これらの事例は、まだ小さな「芽」にすぎませんが、インパクトと利益という「双葉」をつけています。
代表取締役社長 代表執行役員 CEO
青井 浩