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社長メッセージ

2017年8月

企業価値の創造に向けて
未来への一歩を踏み出す
青井 浩 代表取締役社長 代表執行役員

明らかになってきた課題

まず、2017年3月期の概況についてご報告します。当期は、私たちが現在取組んでいる5カ年の中期経営計画の初年度にあたりますが、おかげさまで計画は順調に進捗し、EPSは80.2円(前期比14%増)、ROEは6.7%(同0.7ポイント増)と、いずれも目標を達成することができました。また、営業利益は313億円(同6%増)と8期連続の増益、年間配当金は33円(同11円増)で過去最高となりました。加えて、最適資本構成に向けた財務戦略をすすめたことで、投下資本利益率(ROIC)が加重平均資本コスト(WACC)を上回り、ようやく企業価値の創造を実現することができるようになってきました。さらに、2017年7月には、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が採用したESG投資の3指数のすべてに丸井グループが採用されるという嬉しいニュースもありました。

このように、企業価値創造に向けて未来への一歩を踏み出した丸井グループですが、一方で、課題も明らかになってきました。2017年3月期の当社のTSR(株主総利回り)は–4.5%で、TOPIX平均の17%を下回っています。EPSが14%増と高成長を遂げ、配当も22円から33円へと大幅増配となったにもかかわらず、なぜTSRは市場平均を下回ってしまったのか。

その理由は、おそらく当社の企業価値が投資家をはじめとしたステークホルダーの皆さまに十分に理解されておらず、評価されていないからではないかと思われます。では、どのような点において当社の企業価値が理解、評価されづらいかというと、これまでのステークホルダーの皆さまとの対話の中から推測されるのは、次の2点です。

1つは、私たちが丸井グループの「独自のビジネスモデル」と呼んでいるものが外部から見てわかりづらいということ。もう1つは、未来への取組み、とりわけリスクへの対応が明確に示されていないということです。従って、このレポートでは、①丸井グループのビジネスモデル、②丸井グループの機会と脅威について、しっかりとご説明したいと思います。

① 丸井グループのビジネスモデル

ミドリムシとしてのアイデンティティ

丸井グループの特徴は、創業以来の「小売・金融一体の独自のビジネスモデル」にあります。私たち社内の人間にとっては、このことは日々の商売の中に息づく、ごく自然で、当たり前のことなのですが、問題は、社外のステークホルダーの皆さまから見た時に、わかりづらい、特に、「小売・金融一体」ということが理解しづらいという点にあると考えています。実際に、投資家の皆さまからいただく質問の中で最も多いのは、「丸井グループは小売業なのか金融業なのか」というものです。この問いかけに対して、私たちはいつも「両方です」とお答えするのですが、納得していただける方は多くありません。困ったことです(笑)。

どのくらい困ったことかというと、少々突飛な喩えかもしれませんが、もしあなたがミドリムシだったとして、誰かに「あなたは動物ですか、植物ですか」と聞かれたとします。あなたはどう答えますか。「両方です」としか、答えようがないのではないでしょうか。なぜなら、もし、動物か植物のどちらかだと答えると、質問者は納得するかもしれませんが、ミドリムシとしてのあなたのアイデンティティを否定してしまうことになるからです。それは、あなたにとっても私たちにとっても、できないことです。ミドリムシの特徴は動物であると同時に植物でもあることで、それがミドリムシ独自の価値であるように、丸井グループにとっても、小売であると同時に金融であることが特徴であり、企業価値の源泉となっています。

成長の主役と脇役の関係が逆転

具体的にご説明します。丸井グループは約640万人のクレジットカード会員を持つ小売業として、お得意さまであるクレジットカード会員の皆さまにマルイ店舗をご利用いただくことで成長してきました。ですが、別の視点から見ると、丸井グループは年間のべ約2億人のお客さまがお買物に訪れる店舗を持った金融業でもあります。これまで私たちは、お客さまがマルイでお買物される際の利便性を高めるためのツールとしてクレジットカードをご提供することで、小売を中心に成長してきました。

しかし、時代の変化、特に「モノからコトへ」という消費者ニーズの変化とともに、小売とクレジットカードの関係にも変化が求められるようになってきました。そうした中で、私たちも従来のマルイ店舗だけで利用可能なクレジットカードから、世界中どこでもご利用いただける汎用クレジットカードへと転換することで、ビジネスモデルを革新しました。それが2006年に発行を開始したエポスカードです。それ以来、エポスカードの会員数は400万人から640万人に増加して1.6倍となり、ショッピング取扱高も1,800億円から約8倍となる1兆3,900億円へと成長しました。かつては100%であったマルイ店舗でのご利用額の割合も、今では10%未満となっています。このように、小売の成長を支える脇役であったカードと主役であった店舗の関係は、今では店舗がカードの成長を支える側に回ることで、主役と脇役の関係は逆転しつつあります。

この事業構造の変化を明確に示しているのが、バランスシートです。2014年3月期には、創業以来、丸井グループの成長を牽引してきた小売店舗の土地や建物などの固定資産とカードの営業債権が逆転し、以来、営業債権の残高は過去最高を更新し続けています。

小売と金融はコインの表と裏

ここで強調したいことは、このような事業構造の転換、イノベーションは、丸井グループが小売業から金融業に鞍替えしたことによって実現したわけではなく、小売業としての店舗をカード事業の成長のために活用したことで実現できたということです。カード事業の取扱高に占めるマルイ店舗での取扱高の割合は10%未満といいましたが、一方、カード会員のマルイ店舗における入会者は8割以上で、両事業は完全に補完関係、つまり2つで1つの関係にあります。

コインに例えると、小売と金融はコインの表と裏のようなものです。テーブルの上でコインを縦に置いて、端っこを指先でピンと弾くと、コインはコマのように勢いよく、くるくると回ります。この時、コインは静止していた時の円形ではなく、球形に見えています。丸井グループのビジネスモデルはこの回転し続けるコインのようなもので、表も裏もない球の形をしています。

その財務状況を報告するために、ある時点で球体の写真を撮ると、静止した状態の小売と金融という2つの円が認められます。すると、その面の上にはいろいろな情報を読み取ることができるので、どちらが大きいか小さいか、どちらが表でどちらが裏かというような検討をすることもできますが、そうしたことはあくまでも参考情報であって、丸井グループそのものにとってはあまり重要なことではありません。

丸井グループにとって重要なことは、コインの回転がより滑らかになり、回転スピードが増すことで、より美しく力強い球体になっていくことなのです。

従って、私たちはこれからも小売と金融を分けることなく、人材も店舗もデータもすべてを一体の事業として共有し、「小売・金融一体の独自のビジネスモデル」を進化させることで、企業価値の向上をめざしていきます。

② 丸井グループの機会と脅威

10年後を見据えた8つの環境変化

丸井グループのビジネスモデルが、未来に向けた企業価値創造を実現できるか否かは、私たちが今後の環境変化に長期的に対応していけるかにかかっているといえます。

そこで、およそ10年後を見据えた長期の環境変化について考えてみたいと思います。私たちは、10年後に向けた環境変化について、8つの潮流に注目しています。このレポートでは、これらの潮流が今後、当社の事業にどのような機会と脅威をもたらすかについて検証するとともに、当社の対応についてご説明します。

  1. (1)EC化
  2. (2)モノ消費からコト消費への移行
  3. (3)シェアリングエコノミーの台頭
  4. (4)少子高齢化
  5. (5)インバウンド需要の拡大
  6. (6)キャッシュレス化
  7. (7)貯蓄から投資へ
  8. (8)低金利時代の終息

小売事業の機会と脅威

まず、小売事業にとっては、インバウンド需要の拡大が機会とみなされます。一方、脅威は複数想定されますが、中でも最大の脅威はEC化です。今後EC化がすすむことで、これまでの「店舗でモノを売る」小売業は、すでに米国や中国で顕在化しているように、衰退していくことが想定されます。さらに、いわゆるモノ消費からコト消費への移行がすすむことで、モノの需要はさらに減少していきます。近年顕著になっているアパレルの衰退は、この傾向が顕在化したものとみなされます。加えて、シェアリングエコノミーが台頭してきます。シェアリングは、いい換えるとモノを消費しなくなるということなので、小売にとっては脅威です。そして、少子高齢化により、消費者の数も減少していきます。

これらに対する私たちの対応は、主に現在、中期経営計画ですすめているSC・定借化、つまり百貨店型の店舗から不動産型の店舗へのビジネスモデルの転換とオムニチャネル化の2つです。SC・定借化によって、今後ECに代替されることが避けられないアパレルを縮小し、ECに代替されにくい飲食やサービス、体験を提供するテナントを拡充していきます。また、オムニチャネル化によって、ECと補完的なビジネスに進化することで消費者にとっての新たな価値を創造していきます。

少子高齢化に対しては、年齢や身体的特徴(障がいの有無を含む)、性別(LGBTを含む)を超えて、すべての人に楽しんでいただける商品、商業施設、サービスを提供する、お客さまに向けた「ダイバーシティ&インクルージョン」を推進することで客層と客数の拡大をすすめます。シェアリングエコノミーについては、新規事業として取組むことで、事業領域を拡大していきます。

フィンテック事業の機会と脅威

フィンテック事業にとっては、キャッシュレス化が最大の機会と想定されます。EC化や、モノ消費からコト消費への移行、シェアリングエコノミーの台頭などは、すべてキャッシュレス化を促す要因になると思われます。当社のフィンテックの主力事業であるクレジットカード市場は、キャッシュレス化の進展に伴い、過去10年間、年平均7%のペースでコンスタントに成長してきましたが、今後も2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて環境整備がすすむことから、引き続き年平均7%程度の成長が継続することが見込まれます。一方、脅威としては、キャッシュレス化の進展に伴うキャッシング市場の縮小や、テクノロジーの進化による決済手段の多様化で、クレジットカード市場が侵食されることが懸念されます。

これらに対する私たちの対応は、すでに2006年からすすめているエポスカードによるハウスカードから汎用クレジットカードへのビジネスモデル転換と、中期経営計画で掲げているカード事業からフィンテック事業への事業の再定義です。決済手段の多様化によるクレジットカード市場の侵食の脅威を、自らがフィンテック事業に進化することで機会に転じさせ、また、事業領域を拡大することで、貯蓄から投資への潮流をビジネスチャンスとして取り込んでいきます。

ダウンサイドリスクの遮断と成長投資

以上をまとめると、まず、小売事業では、不動産型の店舗に転換することで、衰退する百貨店型ビジネスから離脱します。また、収益的には、商品の売上高から家賃収入に移行することで、天候や流行、インバウンド需要などの外部環境にほとんど左右されることのない安定した収入を実現します。あわせて、定期借家契約を活用した定期的なテナントの入れ替えによるバリューアップを通じて、着実な成長を実現します。

従来の百貨店型と比べてアップサイドの機会を収益化する力は低下しますが、最大の狙いはダウンサイドのリスクを遮断することにあります。かつての経済成長期には消化仕入方式の百貨店型ビジネスが長らくアップサイドチャンスを享受してきましたが、今や時代は完全に逆転し、低成長経済に入っただけでなく、「モノを売る店舗」は消費者ニーズの変化やEC化の拡大によって、長期的に大きなリスクを抱えているからです。

次に、自社店舗やプライベートブランド(PB)だけでなく、テナントも含めて、ECに代替されることなく、ECと補完的な関係をつくることができるオムニチャネル化によって、新しい価値を創造し、EC化の潮流を捉えて成長できるビジネスに転換していきます。さらに、不動産型になることで活用の自由度が格段に広がる店舗では、新規事業としてシェアリングビジネスも展開します。モノのシェアリングだけでなく、スペースのシェアリングにも取組むことで、お客さまにとってのコミュニティづくりの場を提供し、ライフスタイル・ニーズの変化にお応えしていきます。

中期経営計画では、2021年3月期までに300億円の新規事業への投資を予定しており、オムニチャネルやシェアリングエコノミー、フィンテックなどへの取組みをオープンイノベーションを通じてすすめるために、すでに投資・協業を実施しています。

未来志向のビジネスモデル

私たちがめざしている未来志向の小売は、百貨店でも、ショッピングモールでも、駅ビルでも、ファッションビルでもなく、また、専門店でもない、まったく新しい小売のビジネスモデルです。このように、未来志向で進化した小売の店舗が、今度はフィンテック事業に効いてきます。年間のべ約2億人のお客さまにご来店いただける店舗を持つ金融業は、世界中でも私たちくらいしかいないからです。この店舗と、約640万人のカード会員、小売とカードが連携したビッグデータを活かしてファイナンシャル・インクルージョンを実現し、さらにカード事業を成長させていくことが、私たちのめざす未来志向のフィンテック事業です。

私たちの未来に向けた価値創造の取組みは始まったばかりです。また、めざすビジネスモデルの説明も、このレポートでできる限り試みたつもりですが、まだまだ不十分だと自覚しています。従って、とりわけ投資家の皆さまには、プロとしての厳しいご意見をいただきたいと思っています。

また、お客さま、お取引先さま、地域・社会の皆さま、そして従業員、すべてのステークホルダーの皆さまとの対話を通じて企業価値の共創をすすめていきたいと思いますので、今後ともご支援、ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

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