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Dialogue 04未知の領域への挑戦を可能にする
「一人マルチステークホルダー」の視点

  • 冨田 秀実氏
    ロイド レジスタージャパン株式会社
    取締役 事業開発部門長
  • 青井 浩
    株式会社丸井グループ
    代表取締役社長 代表執行役員

「一人マルチステークホルダー」による経営モデルができたら素晴らしい

冨田:丸井グループの「共創経営」という概念は、私のサステナビリティに対する考え方とマッチしている気がします。企業価値を「すべてのステークホルダーの利益」「しあわせの調和」と定義されていますが、この発想はとても面白いですね。これからの企業像として求められてくるところです。会社は株主の持ち物であるという概念が極端にすすむと、会社の利益を上げようとして、従業員の取り分やサプライヤーの利益を減らすことで、株主に還元するメカニズムが働きがちになります。私はよく企業から、「どのような発想で臨めばいいのですか」と聞かれますが、「一人マルチステークホルダーになってみてください」と答えています。

青井:「一人マルチステークホルダー」というのは、とてもわかりやすいです。

冨田:会社員は会社のことを優先しますが、家に帰れば地域社会の一員であり、もしかしたら会社の株主かもしれません。税金を払って、選挙にも行っているので、政府を支える役割も持っています。NPOで活動しているかもしれません。そういう観点からすると、ステークホルダーは一人一つというように単純には割り切れないはずです。例えば従業員が、お客さまという立場で物事を見てみると、「これは違う」と思ってしまう可能性もあります。そういうすべてのステークホルダーの観点をあわせていくことが大切だと私は考えていたので、丸井さんの企業価値を示す図を見た時に「これだ」と思いました。重なり合う利益をどうやって拡げていくことに結びつけられるか。その経営モデルができたら素晴らしいと思うのです。

「成長から進化へ」のキーワードは、サステナビリティ

青井:経営者に限らず、物事を考える時間軸が短くなっていると思うのです。時間軸が短くなってしまうと、遠くの未来にあるものに現実感がないような。時間軸をもっとグーッと延ばしていくことが大切だと感じています。

冨田:一般的に従業員は1年ごとに評価されるので、1年以内に成果を出さなければいけない。これは経営者も同じ話で、非常に短期的な成果だけを求められて、最終的にはどこに行き着くかというと、たぶん荒廃していくことになってしまうのではないかと思います。長期的に発展していくためには、やはりステークホルダーの利益や調和は大切なことなのです。

青井:ではどうやって長期的に成長していくのか。そもそも成長という言葉よりも、私は「進化」ではないかと思っていますが、どうやって進化していくのかという時のキーワードが、企業価値やサステナビリティになるのでしょうね。誰かが犠牲になり、誰かが利益を得ればいいということではなくて、調和から、矛盾の解決から何か新しいものが、それまでになかったより一段高い価値が生まれてくるというイメージです。

冨田:「進化」という言葉は素晴らしいですね。「持続可能な成長」という言葉もある一方で、環境などの制約を考えると「単純な経済成長は現実的ではないので、持続可能な安定または後退をめざすべきだ」と言う人すらいます。でも「進化」という言葉は、脱皮していくというか、考え方自体も変えていくニュアンスがあります。環境制約がある中、今までの経済成長という発想を変え、本当の価値は何かを問う時代が来ている気がします。

進化の原動力となる「場」づくりは、共感によって生まれる

冨田:「モノの消費からコトの消費へ」のような話も一つの発想の転換で、次は単に金銭的なものではない、次の世界への転換があると思います。

青井:例えば音楽でいうと、ファンの方が同じCDを10枚や20枚買う場合、それはCDそのものが欲しいというより、好きなアーティストを応援したい気持ちを表わすために買っているわけです。そういった応援の気持ちは今後、お金や仮想通貨を使うことでフルに表現ができ、皆が参加することによって回り回って社会や自分も「しあわせ」と感じる世界。それは消費というよりも自己表現でもあり、そういう世界になっていくと思っています。

冨田:何かの「場」をつくるという発想ですね。丸井さんの店舗もそうだと思うのですが、場をつくって、その中でお客さまやビジネスパートナーなどが主役になって豊かな世界をつくっていくという。丸井さんは今、そういうモデルをつくろうとしていると感じました。

青井:まさにそれじゃないかという気がします。私たちの考える企業価値の図に、私たちは出てこないのです。どちらかというと利益や「しあわせ」なのです。先ほどおっしゃっていた「一人マルチステークホルダー」とある意味で近いのですが、「自分なくし」「会社なくし」です。会社がなくなっていった時に、会社とは何かと考えると「場」のようになっていく。要するに、場を運営するのが会社なのかなと。会社は、人の成長を支援する場であり、その時に会社というのは、人やモノがぎっしり詰まった箱のようなイメージです。その箱はだんだん空になっていって、そのうち壁や天井がパタパタと倒れて、残るものは何か「場」があるだけ。そういうイメージなのです。

冨田:丸井さんはそういった場づくりを、共創活動を通じてやっていると思っていますが、「共感」ということがとても大切な気がするのです。

青井:「共感」はとても重要なキーワードでしょうね。調和はどうやって創り出していくかというと、対話を通じて創りあげていくと思うのですが、では対話はどうしたら成り立つかという時に、共感ということが大きな入口になり、共感が持てないと一方的な主張になると思うのです。対話をすると、新しいものがどんどん出てきます。そういう場づくりがうまくできると、とても大きな進化の原動力になる気がします。

株主ガバナンスを超え、ステークホルダー・ガバナンスをめざす

青井:私たちの企業価値の考え方でガバナンスを再定義すると、株主ガバナンスを超えたステークホルダー・ガバナンス。「ステークホルダー・インクルージョン」という未知の領域に踏み込む必要があります。冨田さんがおっしゃった「一人マルチステークホルダー」の作戦ではないかと思います。例えば、お客さま企画会議に参加していただいたお客さまの中には、従業員になっていただいたり、お取引先さまの従業員になったという方もいます。そういう方にはぜひ経営にも参加していただきたいという気持ちがあります。もう一つは、お客さま企画会議への参加の謝礼の代わりに、株を差し上げて株主になっていただく。そうなると一人の中に3つの立場があって、そういう方たちが、お客さまとしてだけではなく株主としても支えてくださることになります。

冨田:従業員にボーナスの一部を株で支給することも考えられますよね。丸井を応援する株主が増え、当然、取締役会に従業員やお客さまの代表がいても、おかしくないメカニズムになっていきますよね。その流れができると、ステークホルダーの利益の重なりがどんどん大きくなっていく、一つのステップになるのではないかと思います。

青井:私たちは何事にも、フロントランナーになりたいと思っています。新次元の社会をステークホルダーと共に切り開いていきたいと思います。

冨田 秀実氏

ロイド レジスタージャパン株式会社
取締役 事業開発部門長

ソニー株式会社にてCSR部発足当初から統括部長を約10年務める。ISO26000(社会的責任)、ISO20400(持続可能な調達)の策定に日本代表として参画。GRIのGSSB(グローバルサステナビリティ標準化ボード)メンバーとして新たなGRIスタンダードの策定にも携わる。経済産業省、環境省、内閣府、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会等で関連の委員を歴任。

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