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Dialogue 01すべての人が「しあわせ」を感じるインクルーシブで豊かな社会

  • 垣内 俊哉氏(左)
    株式会社ミライロ
    代表取締役社長
  • 杉山 文野氏(中)
    特定非営利活動法人
    東京レインボープライド 共同代表理事
  • 青井 浩(右)
    株式会社丸井グループ
    代表取締役社長 代表執行役員

丸井グループがめざすのは、年齢・性別・身体的特徴を超えた「すべてのお客さま」が、インクルードされ「しあわせ」を感じられる豊かな社会です。このテーマについて、障がいを価値として捉えるユニバーサルデザインの専門家である垣内氏、日本最大のLGBTの祭典を開催する杉山氏と、当社グループ代表の青井が「インクルージョン」の可能性と、丸井グループが果たしていく役割について語り合います。

「すべてのお客さま」が
「しあわせ」だと感じる社会

青井:丸井グループは「CSRからサステナビリティへ」という考え方を打ち出しましたが、そこで重要になるのが「インクルージョン」の視点です。私たちはこれを「すべてのお客さまに」と言ってきました。例えばショッピングやサービスは、一部の人だけでなく、すべてのお客さまが楽しめるようでないと、本当の意味での豊かな社会とは言えないのではないでしょうか。年齢・性別・身体的特徴などを超えて、すべてのお客さまをインクルードしていくことが、これからの社会で重要になると思うのです。すべてのお客さまに楽しんでいただけるビジネスと、みんなが「しあわせ」だと感じるユニバーサルな社会は、重なっていると思うのです。

杉山:「すべてのお客さまに」という視点への気づきは、何かきっかけのようなものがあったのでしょうか。青井さんから以前、「すべてのお客さまのために」という趣旨の講演依頼を受けた時、実は嬉しかったのです。考えてみたら、今までは「すべて」と言った中には自分は含まれていないように感じてきました。男女のどちらでもなく、いるのはわかっていても「いない人」として、なんとなく気づかないふりをされてきました。言わない限りわからないという意味では、ずっと「いない人」として「透明人間」のような感覚があったのです。それが「すべて」と言った時に、その中にちゃんと含めてもらえる時代になってきたのだと強く感じています。

青井:私たちもこれまでは若者のお客さまが中心だったのですが、何かを排除するような感覚がとても嫌になっていました。そもそも企業はお客さまをターゲティングするのではなく、一人でも多くのお客さまに喜んでいただくことが仕事なのではないかと考えると、結果として「すべてのお客さま」となったわけです。

垣内:「すべて」の中に障がい者やLGBTの方も含めていただいている思想であったり、何か根幹となる想いがあったのですね。丸井さんが現在取組まれていることは、まさに一つの象徴的なアクションだと思います。社会の捉え方というものはどんどん変わってきていて、私は街中で「車イス系男子」と呼び止められたこともあります。言われたほうも、「そうか、車イス系男子か。そのくらいのものなのだな。そういうレベルになったのだな」と感じました。

青井:その話を聞いた時、とても嬉しくて、そういうノリでいいのだと私も安心しました。お二人に出会って、お二人にしか伝えられない話を聞かせていただき、これまで知らなかった世界が広がっていくのではないかと、ワクワクしたというか、嬉しかったのです。

言わなくてもよくなる時代のために、
今は言う時代

青井:お客さまのお役に立ちたいという理念が浸透しているにもかかわらず、なぜ店内に車イスの方や目の不自由な方があまりいらっしゃらないのか。それは、「どうぞおいでください」という発信をしていなかったからだと気づき、その頃からお客さまに選んでいただけるお店にしていこうと思うようになったのです。

垣内:日本は完璧主義なところがあって、「バリアフリーができていますよ。来られる環境ですよ」と、なかなか胸を張って言えないようです。素晴らしい取組みをされていても、発信はまだされていなかったり。だから多くの障がいのある方やご家族の方には、伝わっていなかったのだろうと思います。決して完璧なバリアフリーが必要なのではなく、こういう想いを持っている人がいるのだということを、まずは伝えてください。多くの人が「足を運んでみようかな」という前向きな姿勢になれるだろうと思います。

杉山:まさに、それと似たケースでLGBTの人を理解・支援しようとする「アライ(Ally)」の存在もなかなか目に見えません。積極的な企業ほど「そんなことは当たり前だ」と思い、「当社はアライです」という言い方はしないのです。私もわざわざ、当事者と非当事者という言い方はしたくはありませんが、やはりそれもまずは言わないとわかりません。LGBTという言葉がなくなっていくためにも、いつか言わなくてもよくなる時代のためにも、今は言う時代だと思うのです。

垣内:障がい者という言葉も、同じように健常者と障がい者を分けることはナンセンスだと言われながらも、やはり課題を解決していくためには、あえて区別した言葉を使わなければいけない場面が多くあります。私が車イスを使っているということは「違い」ではなくて、当たり前として受け止めていけるような社会。障がい者と健常者というような分け方をしなくていい社会の実現を、皆さんと共にめざしていきたいと思っています。

「同じである」ことが力だった時代から
「違い」が力となる時代に変わってきた

杉山:昔は「同じである」ことが力だった時代があったのだと思います。「右向け右」でみんなが同じ方向を向き続けたからこその高度経済成長だったのかもしれません。しかし今は、「違い」が力となる時代に変わってきました。そもそも同じ人は一人もおらず、違いこそが面白いと思います。

青井:一人ひとりが違ったほうが楽しいですよね。私はよく「多様性は楽しい」と言うのですが、「やらなければいけない」ではなく、違いを楽しめるかがとても大切です。そこで変化を受け入れて、自分たちでさらに変化を創り出して進化して、ガラっと違う社会を創りあげていかなければいけないと思うのです。

垣内:違いに対して寛容になるには、やはり時間がかかると思います。寛容になるということは、慣れることでしか醸成されません。慣れというものは、向き合う頻度を増やしていけるかどうかです。違いが力になる、違いが面白いということを、これから世界にも発信していくべきだと、今のお二人の話を聞いていて改めて強く感じました。

杉山:私は「フォー・マイノリティ(マイノリティのために)」という意識を変えていけばいいのだと考えています。マイノリティにやさしい社会は、きっとマジョリティにとってもやさしい社会でしょうし、マイノリティの課題に向き合っていくと、実はマジョリティの課題が解決されるのではないかと思うのです。

青井:それは面白い発想ですね。これまでは数が多い人を中心に回ってきたという感じがします。特に高度経済成長期には、頑張らないといけないので、とにかく一番多い人に照準を当てていこうと日本はやってきました。それでかなり豊かになって、これ以上はあまり伸びなくなってきたのが今ですよね。でも、未だに数が多い人が中心ということが残っていて、これはおかしいんじゃないかなと。頑張らなければいけない時に、とりあえず数の多い人を中心にやっていこうよというのは何となくわからないでもない。しかしそれを達成したら、今度はそれ以外の人も含めて豊かにならないと、豊かになった意味がないよねと。

インクルージョンが、いつしかスタンダードになっていく

垣内:「さりげなさ」というキーワードを、私はよく使うのです。あわてふためくこともなく特別扱いでもなく、自然と包括している、インクルージョンできている。例えば、サイズ展開を多様にすることで、標準サイズ以外の人を自然と包括できている。今までは目を向けられなかった人たちに多くの人たちや企業が配慮し、それを実践すれば、いつしかスタンダードになっていくと思います。

青井:私たちはあまり「障がい」と言いたくなくて、最近は「身体的特徴」と言っています。障がいとサイズを一緒にするなと怒られてしまうかもしれないのですが、身体的特徴、違いという意味ではつながっている気がするのです。

垣内:そういった形で受け止められるようになれば、より自然となじみ、溶け込んでいくと思います。

杉山:慣れという話は本当にそうだと思います。慣れがないから心のハードルがあって、わからない人が「わからない」と言いづらくなっているのではないかと思います。例えば通路に段差があれば障がい者になりますが、段差がなければ障がい者にならないのです。障がいは障がい者にあるのか、それとも社会に障がいがあるのか。その気づきをどれだけ皆で共有できるかです。そういう理解のために何が必要かと考えると、やはり知ることだと思うのです。その知るポイントをどれだけつくっていけるかです。僕は「わからなければわからないと言って」と先に言うのですが、人に興味を持つということがコミュニケーションのきっかけじゃないですか。

一歩一歩向き合って歩み寄り、「バリア」を「バリュー」に変えていく

垣内:知らないことで生まれるバリアはたくさんあります。しかし最近は、社会の捉え方がどんどん変わってきていると感じます。まだ私たちのほうがそれに慣れていないのかもしれません。「知らない」を「知っている」に変えれば、「できない」を「できる」に変えていけば、一歩一歩向き合っていくことができます。お互いの歩み寄りなのだと思います。私は「バリアバリュー」という言葉で「障がいを価値に」と伝え続けています。障がいを理由に誰かを傷つけたり、押し付けるようなことをしない。お互いにとって価値を明確にすることも必要だと思います。

杉山:実は自分では気づいていないけれど、自分で自分に対して偏見を持っていたり、「社会から差別されている」という、社会に対する差別も少しあるのかもしれませんね。今のお話を聞いて、慣れてきている社会に、まだあまり慣れていないというのは、確かにあると思いました。今まで受け入れられなかった側も、当事者と非当事者ということを含めて、お互いが提案していく関係になりたいと思っています。

青井:日本はこれまでとは違う時代に入ってきたと思います。数が多い人だけでなく、それ以外の人も含めて豊かにならないと。お二人はまさに「こういう人が現れたことによって、時代が変わっていく」というような方たちです。ぜひこれからも共にすすみ、新しい次元の世界を創りあげていきたいですね。

垣内 俊哉氏

株式会社ミライロ 代表取締役社長

1989年、岐阜県中津川市生まれ。立命館大学経営学部在学中の2010年、株式会社ミライロを設立。障害を価値に変える「バリアバリュー」の視点を活かし、企業や自治体、教育機関におけるユニバーサルデザインのコンサルティングを手掛ける。従業員35人を抱え、3人に1人は障害のある当事者である。2015年、日本財団パラリンピックサポートセンターの顧問に就任。2016年、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会のアドバイザーに就任。

  • 「バリアバリュー」の視点から、施設、製品やアプリなどを幅広く調査・改善提案をおこなう
  • 企業のみならず教育機関でも講演を実施。品川女子学院では必修授業に

杉山 文野氏

トランスジェンダー
特定非営利活動法人 東京レインボープライド
共同代表理事
NPO法人 ハートをつなごう学校 代表

1981年、東京都新宿区生まれ。フェンシング元女子日本代表。早稲田大学大学院にてセクシュアリティを中心に研究した後、その研究内容と性同一性障害である自身の体験を織り交ぜた『ダブルハッピネス』を講談社より出版。韓国語翻訳やコミック化されるなど話題を呼んだ。卒業後、2年間のバックパッカー生活で世界約50カ国+南極を巡り、現地でさまざまな社会問題と向き合う。帰国後、一般企業に3年ほど勤め、現在は自ら飲食店を経営するかたわら、日本最大のプライドパレードを主催する特定非営利活動法人 東京レインボープライド共同代表理事、セクシュアル・マイノリティの子どもたちをサポートするNPO法人 ハートをつなごう学校代表、各地での講演会やNHKの番組でMCを務めるなど活動は多岐にわたる。日本初となる渋谷区・同性パートナーシップ条例制定に関わり、現在は渋谷区男女平等・多様性社会推進会議委員も務める。

  • 日本最大のLGBTの祭典「レインボープライド」を開催。2016年から全国各地でパレードを開催

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