1. トップ
  2. 投資家情報
  3. トップメッセージ
  4. 社長メッセージ
  5. 2016年3月期

社長メッセージ

2016年8月

丸井グループの企業価値の共創は
始まったばかりです。
青井 浩 代表取締役社長 代表執行役員

革新のDNA ―丸井グループの過去―

丸井グループは、1931年に私の祖父、青井忠治が創業しました。創業時の商売は家具の月賦販売でした。月賦販売というのは、商品の販売と同時にクレジットを提供すること、いい換えれば、小売と金融が一体となったビジネスです。このビジネスモデルは、以後、時代が移り変わり、丸井が扱う商品や店づくりが変化しても、変わることなく受け継がれ、進化してきました。

月賦販売は伊予商人に伝わる商売でしたが、富山県の出身だった創業者は、月賦販売に限りない可能性を感じつつも、無条件に信奉することなく、これを批判的に継承することによって革新し、1960年には日本で初めてのクレジットカードを発行しました。これが第一の革新です。

クレジット販売は、戦後の高度成長期と共に発展し、丸井も順調に成長していきました。しかしながら、1980年代に入ると状況は一変しました。それまで消費の中心だった家具や家電などの耐久消費財が普及したことで、クレジット販売へのニーズが衰退し、業界全体が危機を迎えたのです。

この時期に、それまで丸井のライバルだった同業者たちは大手の百貨店やスーパーに買収され、その結果、小売を捨てて、金融に特化することで、以後はクレジット会社としての道を歩むことになりました。ところが、丸井だけは違う道にすすみました。

それまでの耐久消費財に代わって、需要が高まりつつあった消費財、中でもファッションの小売に特化し、同時に、当時は消費者としてあまり目が向けられていなかった若者を中心顧客とすることで、クレジットニーズを喚起し、小売を捨てることなく、クレジット販売を革新したのです。また、1981年には、クレジットのノウハウを活用したキャッシングをスタートしました。これが、当時「ヤング・ファッション・赤いカード」の丸井といわれた第二の革新です。この革新は大成功し、1991年、丸井の業績はピークを迎えます。

しかしながら、この成功は長続きしませんでした。バブルの崩壊と共に、若者の雇用状況は一変し、非正規雇用が拡大したのです。加えて、1996年からは若者の人口も減少に転じます。少子高齢化の始まりです。消費者のニーズも大きく変化しました。「モノの豊かさ」を求めてきた消費者は、バブルの崩壊によって、「ココロの豊かさ」を求める消費者へと変貌を遂げていったのです。私たちが特化していたファッションへのニーズは急速に減少していきました。丸井の業績は落ち込み、長い停滞の時期が始まりました。

そのような中、2005年、私は社長に就任しました。私のミッションは、過去の丸井の成功体験を打破し、革新によって新たなビジネスモデルを創ることでした。私たちは、まず、クレジットの革新からスタートしました。新しいクレジットカード「エポスカード」の発行を2006年から開始したのです。それまでの「赤いカード」は、丸井の店舗だけで発行し、丸井の店舗だけで利用できるカードで、主な収益源はキャッシングでした。「エポスカード」は、VISAと提携することによって、丸井の店舗以外でも発行でき、また、世界中のどこでも利用できるようになりました。

折しも、2007年から貸金業法改正が施行され、それまでの収益源だったキャッシングが壊滅的なダメージを被りました。貸金業法改正の影響は、私たちの想像を遥かに上回る凄まじいものでした。その影響は7年間にわたって続き、その間、丸井グループは創業以来初となった赤字決算を二度も余儀なくされる経営危機に直面しました。しかし、私たちは新しい「エポスカード」で、ショッピングクレジットを伸ばすことによって、この危機を乗り越えました。キャッシングからショッピングクレジットへの転換、創業の原点である小売と金融が一体となったカードへの革新です。

ところが、悪いことは重なるもので、苦戦が続いていた小売事業は金融危機(リーマンショック)の影響もあり、2008年には、利益がほとんどゼロになってしまいました。これは「モノの豊かさ」から「ココロの豊かさ」へとシフトする消費者のニーズに応えられなかったことが原因です。追い詰められた私たちは思い切った策に打って出ました。モノからコトへのニーズの変化に応えられないのは、私たちが過去の成功体験に囚われて、百貨店型の商売を革新できなかったからだと気づいたからです。百貨店型の商売は、モノを売ることには長けています。しかし、「ココロの豊かさ」を求める現代の消費者はコト、即ち飲食や体験、サービスなどを求めており、こうしたニーズに応えるには、百貨店型の業態は不向きなのです。

では、どうしたら良いのか。私たちの下した決断は、不動産型の商業施設へと業態転換することでした。2014年から2018年までの5年間で、一部物件オーナーさまの意向による対象外の店舗を除き、原則すべての店舗を不動産型に転換することを決め、スタートしました。現時点での進捗率は3割程度ですが、成果を出しつつ着実にすすんでいます。これが、現在進行中の小売の革新です。

このように、丸井グループの歴史は、まさに革新の歴史です。そして、私たちは、丸井グループの革新のDNAを信じています。不動産型への業態転換を決断した時、ある役員は、「業種の違う別の会社に転職するほどの大変化」と表現しましたが、大変だといいながらもどこかワクワクした様子でした。私たちは「革新する力」こそが、丸井グループの本質だと考えます。すべてのステークホルダーの「しあわせ」のために自ら革新し、進化し続けることが私たちのミッションです。

共創経営 ―丸井グループの現在―

私たちは丸井グループの革新をお客さまと共にすすめています。かつて、私たちは自分たちだけで、あるいは、お取引先さまや同じ業界の専門家の方たちと一緒に商売に取組むことで成長してきました。しかし、自社内、業界内の知見だけでは、どうしても過去の成功体験に縛られて、世の中の変化についていくことができなくなっていることに気づかされることになりました。それまでの商売の延長線上でどんなに頑張っても、いえ、頑張れば頑張るほど業績が悪化していったからです。自社の外、業界の外に新しい知見を求めなければ革新はできません。では、一体誰がそのような知見を持っているのか。それは、私たちの目の前にいるお客さまでした。

私たちはこれまで、商品やクレジットカードのプロとして、お客さまと接してきました。商品やクレジットカードについて、私たちの方がお客さまよりもよく知っているのは当たり前です。しかし、私たちのよく知っていることをお客さまに一方的にお話しているうちに、いつしかお客さまにおうかがいすること、ニーズをお聴きして、理解しようとすることを怠ってきたのではないか。お客さまと毎日接しているということだけで、お客さまのこと、お客さまのニーズを理解していると思い込んでいたのではないか。お客さまとの取組みは、このような反省から始まりました。

売場では、どうしてもお互いに売り手と買い手という関係から離れることが難しいため、売場とは違う場所で座談会の機会を設け、お客さまの本音をおうかがいしてみると、私たちの気づかなかったニーズが次々に出てきて、まさに目から鱗の連続でした。私たちは、お客さまをパートナーとして、革新に取組み始めました。

こうした取組みから生まれたのが、プライベートブランドの「ラクチンきれいパンプス」や「エポスゴールドカード」です。「ラクチンきれいパンプス」はデザインや価格だけでなく、それまで業界でなおざりにされてきた履き心地やサイズ展開という潜在ニーズにお応えすることで、大きなご支持をいただき、発売以来累計販売足数300万足以上(2016年8月現在)という、業界でも例のないベストセラーとなりました。

「エポスゴールドカード」は、当社カードの中心顧客である若い世代のお客さまにもお持ちいただけるカードにしたいという願いから、年齢や年収に関わりなく、お得意さまであればすべての方にご利用いただけるゴールドカードになりました。おかげさまで、メインターゲット層である若い世代のお客さまを中心にご支持いただき、今や「エポスカード」の取扱高の60%以上を占めるまでに成長し、カード事業の成長ドライバーとなっています。

私たちは、このようなお客さまとの革新への取組みを、商品、品揃え、テナント開発、クレジットカード、宣伝・販促、IT、オペレーションに至るまで、商売のすべての領域でおこなっています。そして、その取組みのことを「共創」と呼んでいます。この「共創」の最新の成果が「博多マルイ」です。

丸井グループにとって初の九州出店となる「博多マルイ」では、600回以上に及ぶ「お客さま企画会議」やコミュニティサイトにのべ15,000人のお客さまにご参加いただき、一緒に店づくりに取組みました。「自分にピッタリが見つかるお店」というコンセプトをもとに、お客さまとの対話を重ねることで創りあげた「博多マルイ」は、おかげさまで大きなご支持をいただき、来店客数、お買上客数は共に好調な出足で、新規のカード会員数においては、開店時の歴代最高を記録することができました。また、「博多マルイ」は、お客さまとの取組みの集大成であるとともに、お取引先さまとの共創のスタートにもなりました。私たちの共創のパートナーは、このように少しずつ拡がりつつあります。そして、これから私たちが取組んでいきたいのが、すべてのステークホルダーとの企業価値の共創です。

私たちの考える企業価値はすべてのステークホルダーの利益、「しあわせ」の調和です。ステークホルダー間の利益は、しばしば相反するといわれます。例えば、お客さまを優先すると株主さまの利益が軽視され、株主さまの利益を重視すると従業員の利益が犠牲にされるというような具合です。確かに、お客さまの「しあわせ」をひたすら追求していれば自然と株主さまの利益につながるというわけではありません。私たちが、お客さまの「しあわせ」と株主さまの利益が重なるようなビジネスの仕方を工夫し、創り出さなければならないのです。それは、私たちにとっては、百貨店型から不動産型への業態転換でした。これによって、お客さまの「モノの豊かさ」から「ココロの豊かさ」へというニーズの変化にお応えすることができるようになったわけですが、同時に、株主さまの利益にもお応えできるようになりました。なぜなら、重要指標(KPI)が変わったからです。

百貨店型の時には、売上高に対する利益率がKPIでしたが、不動産型になると、不動産の時価に対する利益率、いわゆるNOI利回りがKPIになります。この変化は、私たちにとても重要な気づきを与えてくれました。NOI利回りは不動産の時価に対する利回りなので、店舗の不動産が私たちの所有であるか賃借であるかに関わりなく、使用している不動産をどれだけ有効に活用して利益を生み出すことができているかということがポイントになります。

ところで、不動産、とりわけ土地は、今現在、私たちがそれを所有しているとしても、それは過去に私たちがほかの人から譲り受けたもので、将来、また誰かに譲り渡すことがあるかもしれません。つまり、超長期で見ると、私たちが自分たちの土地と思っているものも、実は世の中から一時的にお預かりしているに過ぎないのではないでしょうか。だとすると、土地を利用する者はその対価として世の中から求められる付加価値を生み出し、世の中にお返しする責任があります。それが、NOIの期待利回りだと考えられます。

この「お預かり」したものを有効活用し、増やしてお返しするということは、私たちと株主さまとの関係とまったく同じではないかというのが、私たちの気づきでした。私たちは、お客さまの「ココロの豊かさ」を求めるニーズにお応えしたいという一心で、不動産型の商売に転換したわけですが、不動産のNOI利回りを向上させることは、結果として、私たちが株主さまからお預かりしている資本に対する利回りであるROEの向上に直結することになったのです。

この「お預かり」という考え方をさらに拡げると、従業員もまた、世の中から一時的にお預かりしていると考えられます。だとすると、会社は従業員が世の中のお役に立つために活躍できるようにする場であるともいえます。このように考えてみると、対立や利益の相反が避けられないように見えていたすべてのステークホルダーがつながっていることが理解できます。そして、すべてのステークホルダーはお互いに近づくことでお互いの利益を増やすことができるのではないでしょうか。

私たちは、すべてのステークホルダーを近づけ、その交わる部分をより大きくしていくことが企業の本質的な役割であり、それが企業価値の向上ではないかと考えます。すべてのステークホルダーの利益の対立を解消し、利益の調和をはかるために対話を重ねることが、私たちのめざす共創経営です。

企業価値の共創 ―丸井グループの未来―

私たちは2017年3月期から2021年3月期に向けて、5年間の新たな中期経営計画をスタートしました。新中期経営計画では、まず、事業の再定義と再編成をおこないました。これまで、小売・店舗事業、カード事業、小売関連サービス事業の3つに分けていた事業セグメントのうち、小売・店舗事業と小売関連サービス事業を統合して、新たに小売事業とし、カード事業をフィンテック事業と再定義しました。

小売事業は、店舗、オムニチャネル、プラットフォームの3つで構成されます。店舗は不動産型への転換をすすめ、オムニチャネルは従来の自主専門店、PB、Webを統合し、Webを軸足とした未来志向の小売に進化させます。また、従来の小売関連サービス事業は店舗とオムニチャネルを支える基盤として広義の小売事業に再編し、小売の進化を加速させます。

カード事業は、フィンテック事業と再定義することで、大きな飛躍をめざします。私たちは創業以来、小売と一体でクレジットの革新をすすめることによって成長を遂げてきました。これからは、若者を中心とした600万人を超えるカード会員と29店舗のリアルの顧客接点が一体となった独自のプラットフォームを、ベンチャー企業を含めたさまざまな企業と共に活用することでオープンイノベーションを展開し、より広い領域で金融サービスの革新をすすめ、新たな価値を創造していきます。

同時に、株主・投資家の皆さまとも企業価値の共創をすすめていきたいと考えています。新中期経営計画では、最適資本構成の実現をめざしますが、これは元々、投資家の皆さまから宿題としていただいていた「めざすべきバランスシートを示してほしい」というご要望に対する、私たちからのお応えでもあります。この数年間で、かつての小売主導の成長からカード主導の成長に移行したことで、バランスシートの左側はカードの営業債権が小売の固定資産を上回る創業以来の変化が生じたにもかかわらず、バランスシートの右側は、小売主導の時代のままでアンバランスになっていました。これを事業構造の転換に合わせて最適化していこうというものです。事業戦略とあわせて最適資本政策をすすめることで、企業価値を確実に向上させることができます。資本政策以外でも、株主・投資家の皆さまからたさんの宿題をいただいています。

「不動産型への転換が終了した後の小売の成長戦略はどうするのか」「Webをもっと成長させられないのか」など、事業戦略についての宿題も数多くいただいています。これらの課題を解決することは、もちろん私たちの仕事ですが、株主・投資家の皆さまと経営課題について対話することは、課題解決の精度を上げるものと確信しています。株主・投資家の皆さまとの対話は、お客さまとの対話と同じだと考えるからです。当社のことや業界の事情については、私たちの方が詳しいのは当たり前です。その一方で、私たちはどうしても過去の成功体験や業界の常識などに囚われがちで、より広い視野、私たちの外から考えることが苦手です。その点、株主・投資家の皆さまは、「投資=経営」の視点からさまざまな業種の企業、世界中の企業と関わっているわけですから、業種も国境も越えて通用する経営の普遍的な知見をお持ちです。対話を通じて、私たちが考え抜いたアイディアを株主・投資家の皆さまの普遍的な知見で鍛え上げていただくことで、企業価値がさらに向上できることを期待しています。

丸井グループの企業価値の共創は始まったばかりです。株主・投資家の皆さま、お客さま、お取引先さま、地域・社会の皆さまと未来志向で企業価値の共創をすすめていけることを心から楽しみにしています。

関連リンク

PAGETOP